県財政の地図
——島のカネはどこから来て、どこへ行くか
沖縄県の一般会計を「入り」と「出」で地図にし、あわせて監査委員・会計検査院・県議会・包括外部監査が文書で指摘したカネの問題を記録します。わたしたちの意見や疑惑の提起は書きません。公的記録にあるものだけを載せます。最終更新 2026-08-19。
1. どこからカネが来るか(2025年度当初予算 8,894億円)
歳入の内訳(億円)
国から来るお金(4,203億円)は県税(1,689億円)の約2.5倍。
| 財源 | 額 | メモ |
|---|---|---|
| 地方交付税(国から) | 2,260億円 | 最大の財源 |
| 国庫支出金(国から) | 1,943億円 | 沖縄振興予算の県分を含む |
| 県税(自前) | 1,689億円 | 4年連続で過去最高 |
| 地方消費税清算金 | 740億円 | |
| 諸収入 | 802億円 | |
| 繰入金(貯金の取り崩し) | 505億円 | 基金からの繰入 |
| 県債(借金) | 419億円 | 臨時財政対策債はゼロ |
自前の財源(自主財源)の比率は44.5%で県として過去最高。ただし県自身が資料で「他の県と比べて自主財源の割合が低いことが課題」「国の地方財政制度に大きく依存した脆弱な構造」と書いています。
出典:沖縄県の財政2025(県財政課PDF)/令和6年度決算の概要(出納事務局PDF)
2. 沖縄振興予算は減り続けてきた
沖縄振興予算の推移(当初予算・億円)
新振計初年度の2022年度に約330億円減(赤)。以降3,000億円割れが続き、2026年度は10年ぶりに微増(+5億円)。
| 年度 | 沖縄振興予算 | うち一括交付金 |
|---|---|---|
| 2018〜2021 | 各3,010億円(4年連続) | 2018年: 1,188億円 |
| 2022 | 2,684億円(▲約330億円) | —(9年連続減の途上) |
| 2024 | 2,678億円 | 振興予算比28.5%(2013年度は53.7%) |
| 2025 | 2,642億円 | 721億円 |
| 2026 | 2,647億円(10年ぶり増額・+5億円) | 736億円 |
県が求める「3,000億円台」を下回る状態が続いています(2026年度概算要求2,829億円で5年連続の未達。知事は「納得いかない」と表明)。県の使い道の自由度が高い一括交付金は、ピーク時から4割水準まで減少しました。
出典:内閣府 令和8年度沖縄振興予算PDF/参議院・立法と調査「沖縄振興一括交付金の現状と論点」/日本経済新聞 2025-08-28(報道)
3. どこに使っているか(2025年度・性質別)
- 義務的経費 3,177億円:人件費2,216億/扶助費390億/公債費(借金返済)571億
- 投資的経費 1,347億円:普通建設事業費1,302億など
- その他 4,370億円:補助費等2,713億(市町村向け等が最大)/貸付金703億/物件費576億
- 目的別のトップは教育費(決算構成比20.3%)、次いで民生費(15.8%)
県自身が「義務的経費の割合が高く弾力性に乏しい財政」と明記しています。つまり、新しい公約に回せる自由なカネはもともと少ない構造です。
出典:同「沖縄県の財政2025」/令和6年度決算の概要
4. 貯金と借金(8年の推移)
県の貯金(主要3基金の残高・億円)
コロナ後に大きく取り崩し、4年で半分近くに。毎年500億円台を繰り入れて予算を組む状態が続く。
- 一般会計の当初予算規模:2018年度 7,310億円 → 2026年度 9,468億円(過去最大・8年で約+30%)
- 主要3基金(貯金)残高:2021年度末 約1,103億円 → 2025年度末見込み 約600億円(コロナ後に大きく取り崩し。毎年500億円台を繰り入れて予算を組む状態)
- 県債(借金)残高:2025年度末 約4,950億円(緩やかに減少傾向)
出典:沖縄県財政の推移/「沖縄県の財政2025・2026」
5. 公的機関が文書で指摘したカネの問題(玉城県政期)
① 県ワシントン事務所問題(2024年発覚〜2026年)
駐在職員のビザ取得のため県が100%出資の株式会社を設立していたが、設立決定の決裁文書が存在せず、株式は公有財産台帳に載せず、会社の経営状況を県議会に報告していなかった(地方自治法上の報告義務違反を知事が認め陳謝)。関連費用は年約1億円・約10年間。
- 2024年11月:令和5年度決算を不認定(本土復帰後初)→12月に百条委員会設置
- 2025年6月:県監査委員が「(事務所の銀行口座について)全ての入出金の内容を確認できなかった」と議会に報告——これが本県政期で「使途を確認できない公金」に最も近い公的認定です
- 2025年11月:令和6年度決算も2年連続不認定。職員6人を訓告処分
- 2026年7月:百条委が報告書を全会一致で可決(「設立手続きに瑕疵」「県行政の信頼を損ねた」)。知事への問責決議を可決(同知事に対し初)
- 知事の公式発言:「行政の長として、問題の経緯について深く反省している」(百条委証人尋問)
- 行政側の対応:事務所は2025年6月に退去・会社解散。公文書管理条例の制定方針、内部統制の専任職員増員など再発防止策を表明
② 港湾2特別会計が「地方自治法違反状態」の赤字決算(2023年発覚)
宜野湾港・中城湾港(新港地区)の2特別会計が、歳入の過大見積り(使用料の誤計上・重複計上)により赤字のまま、法令上必要な繰上充用の手続きを取らずに決算。包括外部監査(令和6年度)は「照合作業を行わなかったことにより…地方自治法違反の状態になっている」と記載。県財政課は「県として初めて」の事案とし、補正予算で処理。
③ 会計検査院の沖縄関連指摘(令和5年度報告:8件・計約1億4,250万円)
例:沖縄国際物流拠点活用推進事業費補助金の過大精算。令和6年度報告では、使われないまま制度が終了した観光防災の実施設計書979万円が「不当」認定(監査翻訳カードAC-001参照)。
④ 回収できていないカネ・諦めたカネ(毎年の定点)
令和6年度決算:一般会計の収入未済31億9,288万円(主因は県税20.9億円)、不納欠損(回収を諦めた額)1億5,154万円。特別会計の収入未済は31億7,256万円で前年比+16%増(貸付金系特会の回収難)。県監査委員は「依然として多額」「債権を放置したまま時効を迎えることのないよう」と毎年指摘しています。
⑤ 「不適切事案の続発」自体が監査テーマになった
令和6年度の包括外部監査はテーマそのものが「度重なる不適切事案の再発防止並びに現状の内部統制の総点検」。県も2023年度に重大事案続発を受けた期中総点検を実施し、2024年度から内部統制の専任職員を増員しました。
(分離枠)議会で追及されたが、司法は適法と判断したもの
万国津梁会議の設置支援業務委託(2019年度・計2,166万円)は、随意契約・再委託の妥当性が県議会で追及され住民訴訟になりましたが、那覇地裁2022年2月16日判決は返還請求を棄却し「契約は違法・無効ではなく、支出も不適切ではない」と判断しました。公的機関による違法・不当の認定はありません。
出典:判決資料(原告団体公開)※原告側サイトのため判決文自体を参照
6. まとめ(数字だけ)
- 入り:交付税2,260億+国庫1,943億 > 県税1,689億——国依存の構造は続く。振興予算は3,010億→2,647億へ縮小
- 出:教育・福祉・人件費・借金返済で大半が固定。自由に動かせるカネは少ない(両候補の新公約はこの制約の上に載る)
- 貯金は8年で半分近くに(1,103億→約600億)。予算規模は過去最大(9,468億)
- 「使途不明金」に最も近い公的認定は、ワシントン事務所口座の「全ての入出金の内容を確認できなかった」(県監査委員・2025年6月)
※誤り・見落としの指摘はいつでも:X(@shimanavi_org)DM/contact@shimanavi.org。訂正履歴を残して直します。
島のカネは、島の記録に残る。